皆様お変わりございませんか?
さて、今年のザルツブルク音楽祭におけることはじめは、昨日開催されたプッチーニのオペラ「三部作」のゲネラルプローべ(総合リハーサル)でした。
来年元日にニューイヤーコンサートにてタクトを振ることが決定しているフランツ・ヴェルサー=メストさんが指揮を執り、3つの演目全てにおいてヒロインを演じるのが、ソプラノ歌手のアスミク・グリゴリアンさんです。
「ジャンニ・スキッキ」は、遺産相続を巡る遺族の欲深い駆け引きの物語で、よくあるお話ながら、最後に思わぬどんでん返しがあり、人間の愚かさと滑稽さに、祝祭大劇場が笑い声で包まれました。
「外套」は、セーヌ川岸に停泊するはしけ舟を舞台とする男女の三角関係の物語です。
アスミク・グリゴリアンさん演じる若き妻ジョルジェッタは、夫である初老の船長ミケーレとの単調な暮らしに行き詰まり、夫の目を盗んで、荷下ろしを担う沖仲夫ルイージと逢瀬を繰り返すのですが、その関係を続けるべきか否か迷ってもいました。
ある夜、ジョルジェッタの灯すマッチの火を合図に落ち合う約束をしたはずが、夫ミケーレのタバコの火を合図だと勘違いしたルイージはのこのことやって来て、妻の心を奪った相手を待ち伏せしていたミケーレに息の根を止められてしまうという衝撃の展開が待っています。
「修道女アンジェリカ」は、貴族に生まれながら未婚の母となったがために、修道院へ送られたアンジェリカの底知れぬ孤独の物語です。
イエス・キリストと聖母マリアに全てを捧げて質素に暮らし、修道院の庭で薬草を育てつつ、たった一度だけ腕の中に抱いた息子の便りを7年間待ち続けるアンジェリカ。
ある日、叔母の侯爵夫人が初めて訪ねて来たかと思えば、アンジェリカの妹に亡き両親の遺産を譲るために遺産放棄の書類にサインをするようにとのことでした。
何の異存もなく書類にサインをしたアンジェリカが息子の消息を尋ねると、叔母は口をつぐんでしまいます。
諦めずに執拗に問いただすと、ついに叔母が真実を語ります。
「2年前に病を患って、とても重い病だったの」
するとアンジェリカは鋭い勘で悟ります。
「死んでしまったの?」
叔母は苦しげに認めてその場を去ります。
「母もなくお前は死んでしまったのね」と嘆く彼女にシスターが差し出したのは、たった一度しか抱かせてもらえなかった息子の遺品の数々でした。
頭のてっぺんからつま先まで、そして手指の一本一本から、愛する息子を失った母親の喪失感が溢れ出し、鬼気迫るものがありました。
出家以来、自身を律して来た禁欲的な修道服を脱ぎ捨てたアンジェリカは、タバコを一服すると、大切に育んで来た庭の薬草を摘み取ります。
お察しの通り、毒草も密かに栽培していた彼女は、自らそれを口に含んで命を絶つのです。
「私は、自らを死に至らしめるという重罪を犯してしまった。マリア様、あなたのご覧になっている御前にて、私は己を殺害したのです」
いよいよ断末魔の叫びを上げようという頃に、失ったはずの子供が突如として現れ、アンジェリカに駆け寄ります。
結末はわかりきっているのです。
プッチーニのオペラですもの。泣かせるための作曲であり、作劇であることは重々承知しているのですが、マスカラが落ちて頬に流れるのを止めることはできませんでした。
休憩を入れて4時間に及ぶ公演にて、いずれも大役を3つ、姿勢も、歩き方も、手先の所作も、表情も、そして歌い方も見事に演じ分けたアスミク・グリゴリアンさんからますます目が離せなくなりました。
この度は、音楽をこよなく愛するドクターBと待ち合わせをして出かけました。
まだまだ心配事は耐えないかとは思いますが、皆様も充実した夏休みをお迎えくださいませ。
我去了萨尔茨堡音乐节的总彩排。 Asmik Grigorian演唱了普契尼的歌剧三部曲《Gianni Schicchi》、《Il tabarro»和《Suor Angelica》,但《Suor Angelica》却忍不住泪流满面。
Wir haben uns gestern auf einer Generalprobe von Giacomo Pucini « Gianni Schiki», «Il tabarro»,«Suor Angellica» vergnügen.
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